「硫黄島からの手紙」
2006年 12月 01日クリント・イーストウッドはやはり巨匠だと思わせるような作品。戦争映画ではあるけれども、戦争映画であることを忘れて普通の歴史ドラマとして見入ってしまいました。当然戦争の悲惨さや無意味さを伝えているんだけれども、硫黄島に飛ばされて、極限状態で生きている兵士たちの姿が痛いほどわかります。アメリカ人であるイーストウッド監督がこの日本人の文化、心理、基本精神、などこんなによく描けたものだと感心させられました。アメリカ人が見る日本の姿でまともなものが今までまったく無かったので、まるで日本の監督が作ったような感覚。でも日本人だったらこんなに冷静に作れなかったと思うし、イーストウッド監督が中立ということばにこだわる意味がわかったような気がします。全編にわたり、モノトーンのようなもの悲しい色調。赤い色、特に血であったり勲章であったり、日の丸であったり、戦争の象徴ともいえるものだけがくっきり浮かび上がる画像はこだわりが感じられます。
軍人としても立派な、そして人間としてもこの上なく立派で尊敬できるような人物栗林を演じる渡辺謙。自らも生き残れないことを察知しながらも部下を愛し統率していく姿は人間の大きさも含めてすばらしいです。こんな役をやるとますますあこがれますね。
でもやっぱりあくまで死にたくない!ということを演じ続けた二宮クン。ずっとおびえたような表情で助けてあげたくなります。これはやっぱり助演でオスカーにノミネートされるかもといううわさも納得がいく演技。彼はアイドルやるより役者やったほうがいいと思います。
人間極限の状態で気持ちがおかしくなるというのもよくわかったし、んんん、イーストウッド監督、よく作ってくれました!といいたいです。「父親たちの星条旗」よりも日本人である以上は見ておかなければならない作品だと思います。文化の違いで、アメリカサイドの物語が受け入れられなくても普通邦画として見られる作品であると思います。★★★★☆